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2007 02,06 16:52 |
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明日はアキラの誕生日。 カヨは、メッセージを送ろうかまだ迷っている。
アキラと最後に会ったのは、いつだったろう。そう遠い昔ではない気がするのに、思い出せない。 最後に電話で話したのは、去年のクリスマスだったか。
カヨはふと、机の中の引き出しに入っていた絵葉書を手にとってみた。 その引き出しは毎日あけるし、毎日見ているのに、手にとって見るのは久しぶりだった。 絵葉書の写真は外国の美しい町並み。カヨがずっと行きたいと、アキラと話していた場所だ。 そんなこともこの絵葉書を手に取るまで忘れていた。 裏返し文章を読むのに覚悟が必要だった。それは、僅かに残るアキラへの後ろめたさだった。
文章の内容はアキラの旅先からの報告と、 カヨがアキラに送ったバースデーメールで心が温まったと書いてあった。
「心が温まった」 その言葉にカヨは心がますます痛んだ。 自分が愛されていたという記憶よりも、自分が人の心を温める存在だった幸福のほうが酷く鮮明に心に蘇る。 アキラとカヨは付き合ったわけではなかった。カヨはずっとアキラの告白を断り続けていた。 カヨもアキラのことを嫌いと思っていた訳ではないが、友達にしか思えず 「まだふたりとも若すぎる」と思っていた。
カヨは、ふいに先週今彼に言われた言葉が頭に浮かんだ。
「お前のことは好きだけど、愛してはいない」
ああそうだ。
「私もアキラのことを好きだけど、愛していたわけではなかった。」 そう思っていたけれど、実は本当に心から愛していたんだ――
カヨは、愛とはこの絵葉書のようなものだなと思った。 どんなに離れていても、時空を越えて人の心を温め癒すもの。
自分の心に、相手というもう一人の人間が宿るということ。
カヨは絵葉書を元の場所に戻した。 カヨの心は不思議と晴れやかだった。
人生という旅の中で、二人の道がひとつになることは無いだろう。それでも良いと思った。
「明日はアキラに素敵なメッセージを贈ろう。」 PR |
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